手のお話(上)
手は私たちの生活に欠かすことのできない身体の一部です。今回から3回にわたり、大切な手についてのお話にお付き合い下さい。
様々な働き
じっと手を見て自らの不甲斐なさを慨嘆する短歌を詠んだのは石川啄木ですが、手には「持つ」「握る」「掴む」「振る」「押す」「撫でる」など実に様々な働きがあります。
実際、手の働きを表わす「扌」(手へん)を使う漢字は1300以上あるとされ、私たちはそれだけ多くの動作を手に頼っているということになります。
ペンフィールドの研究
さらに、手は神経を通じて脳と密接に結びついています。
カナダの脳外科医W・ペンフィールド(1891~1976)は、脳に電気刺激を与えることにより、脳のどの部分が身体のどの部分に対応しているかを調べました。
その結果、手や手指を支配する脳の領域が広範囲に及ぶことが分かり、ペンフィールドはそれを「脳地図」と呼ばれる図の形で発表しました。
その脳地図を人間の姿に当てはめると手が異常に大きい左図のようになります。
「第2の脳」とも
哺乳類の中で人間を特徴づけているのは2本足で歩くという二足歩行ですが、手を使って文明を築いてきたことは見逃せません。そのため手に対する脳の面積が大きくなったと考えられます。
ペンフィールドの発表は全世界に衝撃を与えましたが、それ以来、手は「第2の脳」と呼ばれるようになっています。
普段から使いましょう
つまり、普段から手や指をよく使うということは脳の活性化にも直結するというわけですね。ことほど左様に手は大切です。
セントラルクリニック 院長
村山 一彦(むらやま かずひこ)
山形市生まれ。埼玉医科大学を卒業後、同大病院、篠田総合病院を経て2004年に産婦人科を中心とするセントラルクリニックを開院。社会福祉法人・慈風会の理事長として特別養護老人ホーム「なごみの里」、認可保育所「はらっぱ保育園」も手がける。