山形コミュニティ新聞WEB版

健康講座・医学のうんちく

持続性性喚起症候群(上)

Share!

 性行為を望んでいないにも関わらず、突如として強烈な性的興奮が生じる「持続性性喚起症候群(PGAD)」について、今回から2回にわたり最新の知見をご紹介しましょう。

〝色情症〟とは異なり

 PGADは普通の日常生活が送れないような強烈さと頻度の多さが特徴ですが、いわゆる〝色情症〟とは定義、概念から異なります。オーガズムにより一時的に症状は緩和しますが、数時間後にはぶり返します。
 2001年に米・ニュージャージー医科歯科大の医師により初めて報告され、18年の国際疾病分類の改訂で初めて掲載されました。最近では、性器骨盤感覚異常(GPD)とも呼ばれています。

女性に多い患者

 女性に発症することが多く、女性を対象にした複数の疫学的調査では0.6~3%に認められると報告されていますが、16年にはトルコ・バシュラム病院の医師が男性の症例を報告しています。
 もっとも、PGADは他人に言えない恥ずかしいことだと感じる患者が多いとされ、有病率の詳細は不明です。ただ自分の性的欲求に嫌悪感を感じ、自殺したケースも報告されています。

診断基準は

 診断基準としては、(1)望んでいない煩わしく苦痛な性的興奮が3カ月以上継続する (2)生殖器から骨盤にかけてチクチク感、灼熱感、掻痒(そうよう)感などの感覚異常がある (3)陰核のほか恥丘(ちきゅう)、外陰部、膣(ちつ)、尿道、会陰部、膀胱(ぼうこう)に発生する (4)自制できない過度の回数の性的興奮 (5)性的関心や性的欲求を伴わない――などです。

関連する症状

 関連する症状としては (1)性行為による症状の悪化 (2)損なわれる性的興奮 (3)特定の状況での性器骨盤感覚異常の悪化 (4)絶望感や自殺願望 (5)身体所見上の性喚起の欠如――などがあります。

山形徳洲会病院院長

笹川 五十次(ささがわ いそじ)

1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。

記事閲覧ランキング

  • 24時間
  • 週間