人口減少と性
残念なことに、国内の出生数が70万人を割り、山形県の人口が100万人を切りました。要因は複雑に絡み合っていますが、精子数の減少なども見逃せません。
精子数は減少傾向に
デンマークのスカケベック博士が「過去50年で精子数が半分になっている」という衝撃の報告をしたのは1992年。イスラエル・ヘブライ大の血球チームも2017年、過去40年間で精子数が半減していることを報告しています。
原因としては、化学物質、ストレス、喫煙、飲酒、食物などが指摘されていますが、いくつもの原因が関与している可能性もあり、究明は困難とされています。
精子の質が寿命にも影響
2025年、デンマーク・コペンハーゲン大の研究チームは、1965~2015年の50年にわたり約7万8000人の男性を追跡調査した結果、動いている精子の総数が多い人は少ない人に比べ生殖能力が高いだけでなく、寿命も3年近く長い可能性があると発表しました。
具体的な内訳は、総運動精子数が1億2000万超の男性の平均寿命は80.3歳と推定されたのに対し、0~500万の男性は77.6歳、無精子症の男性では78.0歳とのことです。

山大も調査に参戦!
山形大も負けていません。櫻田香氏らの研究チームが22年、県内に住む40歳以上の約2万1000人の男女を対象に性的興味と重大疾病との関連を調べたところ、性的関心を持たない男性では全死亡率、およびがん死亡率が有意に上昇していることが分かりました。
健康に欠かせない性
生殖の健康と全般的な健康の間には深い関連があるようです。精液の質の調査が、将来の健康に重要な情報を提供するかもしれません。

山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医。
