山形コミュニティ新聞WEB版

健康講座・医学のうんちく

持続性性喚起症候群(下)

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 前回に続き、性行為を望んでいないにも関わらず、突如として強烈な性的興奮が生じる「持続性性喚起症候群(PGAD)」のお話です。

多岐にわたる発生部位

 発生部位としては、(1)外性器 (2)骨盤・腹膜(ふくまく) (3)馬尾(ばび)(脊髄(せきずい)下端にある神経の束) (4)脊髄 (5)脳が考えられています。
 外性器の原因疾患では陰核の癒着(ゆちゃく)や炎症、外陰部の炎症、膣前庭(ちつぜんてい)の炎症や慢性疼痛(とうつう)、尿道腫瘍(しゅよう)、尿道炎、尿道脱、間質性膀胱炎(ぼうこうえん)などがあります。骨盤・腹膜では骨盤底筋の機能異常、陰部神経障害、骨盤内うっ血症候群などがあります。
 馬尾では仙骨神経根嚢胞(せんこつしんけいこんのうほう)、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア、線維輪断裂(せんいりんだんれつ)、下肢静止不能症候群、外傷などで、脊髄では外傷、脊髄手術、神経因性膀胱(ぼうこう)など。脳では抗うつ剤の内服、パーキンソン病やてんかんなどの神経疾患、性的虐待などです。

MRIなどで診断

 原因疾患が多く、発生部位も複数であることもあり、部位の特定に苦慮することもあります。
 診断にはMRIなどの画像検査やホルモン検査が有効なこともありますが、神経学的検査で発生部位を特定できることもあります。

薬物療法は未確立

 原因疾患が明らかであれば、それに対する治療を施します。薬物療法は確立されておらず、神経障害性疼痛治療薬、抗てんかん薬や強迫性障害に有効な抗うつ薬などが使われることもあります。
 認知のあり方を修正し、問題に対処することで症状を改善する認知行動療法や、身体の生理反応を可視化した情報として把握して調整するバイオフィードバック療法が有効なこともあります。

現状、完治は難しく

 ただ様々な治療が報告されているものの、完治は難しいのが現状です。

山形徳洲会病院院長

笹川 五十次(ささがわ いそじ)

1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。

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