<荒井幸博のシネマつれづれ>コンプリシティ 優しい共犯

2020年1月10日
胸を熱くする山形ロケ作品

 大石田町を舞台に2017年に撮影された日中合作映画「コンプリシティ 優しい共犯」が17日に公開される。

<荒井幸博のシネマつれづれ>コンプリシティ 優しい共犯

 中国 河南省から技能実習生として来日したチェン(ルー・ユーライ)は、劣悪な環境に耐えられず職場を逃げ出し、流されるままに窃盗に手を染めていたが、ひょんなことから他人になりすまして大石田町の小さなそば屋に住み込みで働き始めることに。
 主人の弘(藤竜也)は寡黙な男で、実の息子との関係も悪く、心に孤独を抱えていた。そんな弘にチェンは自分の父親を重ね、2人は本当の親子のような関係を築いていく。だがチェンを追う警察の手が迫り――。

 メガホンをとった近浦啓監督はこれまでに短編映画で世界の脚光を浴びた経歴の持ち主。長編デビューとなる本作も19年2月のベルリン映画祭でプレミア上映され、大喝采を浴びている。
 近浦監督は15年冬にも大石田で短編映画「なごり柿」を撮影した経緯があり、夏の大石田も撮ってみたいと再びのロケ先に選んでくれたとか。町ではエキストラの募集や撮影場所の選定などで全面協力したと聞く。
 近浦監督に話を伺うと、ルー・ユーライを主役に選んだのは北京でのオーディションで、何故オーディションを受けたのかを尋ねると「憧れの藤竜也さんと共演できるから」と答えたという。
 そば職人役の藤竜也さんには「大石田町そば道楽の会」で1カ月修業するようお願いしたとか。会長さんからは「1カ月ではとても無理。吹き替えを使った方がいい」と言われたものの、実際に1カ月後に藤さんに会ってみたら完璧なそば職人になっていて、くだんの会長さんも舌を巻いていたそうです。

 外国人労働者や悪化する日中関係など社会派の要素も強いが、ルー・ユーライと藤竜也が醸し出す情愛の素晴らしさ、そして大石田の田園風景、花火、街並みなどに心引き寄せられ、故テレサ・テンのエンディング曲「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」に胸を熱くする。 


<荒井幸博のシネマつれづれ>コンプリシティ 優しい共犯
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。