<荒井幸博のシネマつれづれ> 奇跡

2011年6月24日
心温まる家族ドラマ
 航一と龍之介は小学6年と4年生の兄弟。両親の離婚で航一は鹿児島で母親と、龍之介は福岡で父親と暮らしているが、再び4人で暮らせることを願う2人は「九州新幹線で博多から南下する『つばめ』と鹿児島から北上する『さくら』がすれ違う瞬間に奇跡がおきる」という噂を信じ、ある計画を立てる。果たして奇跡は起きるのか…。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 奇跡

主演「まえだまえだ」

 主人公の兄弟を演じるのが小学生の兄弟漫才コンビ「まえだまえだ」。兄・航基の明るさの裏にある繊細さ、弟・旺志郎の無邪気な明るさがぴったりハマっている。実際、漫才コンビとは知らずにオーディションで2人と出会った是枝裕和監督はその抜群の演技カンの良さに魅せられ、当初考えていた幼い恋の話を、兄弟を中心に据えた話に変更したという。
 
オールスター級の共演陣
 
 龍之介の同級生の女の子を演じているのは本木雅弘の長女・内田伽羅。祖母にあたる樹木希林も鹿児島の祖母役で出演している。まだ11歳だが、すでに大物感さえ漂う。
 このほか、橋爪功、大塚寧々、オダギリジョー、原田芳雄、阿部寛、長澤まさみ、夏川結衣らバラエティーに富んだ実力者が、温かく脇を固めている。
 
演出力増した是枝監督

 是枝監督の名を一躍有名にしたのは2004年の「誰も知らない」で、当時14歳だった柳楽優弥(やぎら ゆうや)にカンヌ国際映画祭史上最年少および日本人初の最優秀主演男優賞を獲らせた経歴の持ち主。是枝監督にとっては子どもを主人公にしたのは同作以来で、その演出力により磨きがかかった、というより深みが増したと思わせてくれる作品だ。
 
奇跡は起こすもの

 奇跡とは、強く願い、そのために努力した人に当たり前のように起きるものだと感じた。そして橋爪功が作る鹿児島の名物菓子「かるかん」が無性に食べたくなった。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 奇跡
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。