<荒井幸博のシネマつれづれ> マイライフ・アズ・ア・ドッグ
今号では、私が落ち込んだ時に観る微笑ましく、心温まる映画をご紹介したいと思います。それは1985年のスウェーデン映画(日本公開88年)「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」。

健気な少年が主人公
時代は1958年。12歳のイングマルは船乗りのパパが長い間帰ってこなくても、ドジをして大好きなママに怒られても、兄のエリクに苛(いじ)められても決してメゲない。彼はいつも新聞を読み、自分より不幸な事象を見つけては「それに比べればボクはマシだ」と健気に自らを励ます。
そんなイングマルのママが結核を患い入院。兄は父方の伯父へ、そしてイングマルは母方の叔父グンネルの家に預けられることになる。
事情で見知らぬ土地へ
叔父さんの住むスモーランドはガラス工場で成り立っている山間部の小さな村。村人はちょっとエッチなグンネル叔父さんをはじめ、いつも屋根の修理をしているフランソン、死にかかっているのに女性の下着カタログを見ては興奮している老人、綱渡りの名人、セクシーなオブジェばかり作る芸術家、緑色の髪の少年、村1番のグラマー美女など、皆イングマルを温かく迎えてくれる。
温かい周囲の人々
次第にイングマルは笑顔を取り戻すが、ママの死と愛犬シッカンの死に際しては泣きじゃくる。
それでも、いつもそうするように星を眺め、かつて新聞で読んだ「人工衛星に乗せられ餓死した不幸なライカ犬」を思うのだった。
ママもシッカンもいなくなったけれど、イングマルは決して一人ぼっちじゃない。彼を温かく包んでくれる村人たちがいるのだから…。
ともすればお涙頂戴の安っぽい物語になりそうだが、主人公の愛嬌ある仕草や表情、ユーモラスな村人とのやりとり…。笑い、癒(いや)され、思いっきり主人公を抱きしめたくなる。元気をもらえる映画だ。
被災された皆さんへ
山形に避難された皆さんは主人公イングマル、そして私たちがスモーランドの村人になれればと思います。皆さんに元気をあげたい。
また被災地の避難所で過ごしている皆さん、諦めないで下さい。折れないで下さい。希望を持ち続けて下さい。我々も想いはひとつです。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。