<荒井幸博のシネマつれづれ> 小川の辺
「花のあと」 「座頭市」 「必死剣鳥刺し」 「十三人の刺客」など今年も庄内映画村や庄内地方で撮影された時代劇映画が相次ぎ公開されたが、来年初夏には山形市を中心に上山市でも撮影された藤沢周平原作「小川の辺(ほとり)」が公開される。
上山市でもロケ
実はその昔、映画ロケなど珍しかった県内にあって上山市だけが気を吐いていた時期があった。1952年公開の「山びこ学校」、64年公開の石坂洋次郎原作「何処へ」、71年公開の「樹氷悲歌」などなど。
その上山市では12月4日に「樹氷悲歌」のロケ地を巡るイベントが催されたほか、11日には蔵王などで撮影された60年公開の「銀嶺の王者」の上映会も開かれた。
私もナビゲーターとして参加したが、往時の活気を取り戻したいという市民の熱意を感じた2つのイベントだった。そんな上山市でも時代劇の撮影は「小川の辺」が初めてではないだろうか。

藩命に翻弄される物語
この映画で東山紀之演じる戌井朔之助(いぬいさくのすけ)の竹馬の友で、藩政を批判して脱藩せざるを得なくなる佐久間森衛を演じたのが片岡愛之助=写真。藩命を受けて朔之助は心ならずも森衛討伐に向かい、小川の辺で決闘する——。
片岡愛之助に注目
愛之助の果たす役割は重要なのだが、寡聞にして彼を知らなかった私は役不足なのではないかという懸念を抱いていた。
その愛之助が傷害事件で市川海老蔵が休演した「吉例顔見世興行」で海老蔵の代役に立ち、海老蔵の不在を補って余りある好演で絶賛を浴びたのは記憶に新しい。彼に不明を詫(わ)びたいし、彼なら見事に佐久間森衛を演じてくれているはずだ。
興行面で期待も
無名だった愛之助が全国から絶賛されたことは「小川の辺」にとっても朗報。不謹慎からも知れないが、海老蔵事件を奇貨としてもらいたい。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。