<荒井幸博のシネマつれづれ> おにいちゃんのハナビ

2010年9月24日
兄妹愛、家族愛に涙

 白血病を患(わずら)っていた16歳の華(はな)が半年の入院を経て退院すると、大好きな兄・太郎は引きこもりになっていた。一家は5年前に東京から新潟県小千谷市片貝町に引っ越してきたのだが、当時中学3年生だった太郎は地元に馴染(なじ)めない。高校に進んでも友人はできないままで、卒業の日に父から叱責(しっせき)されて自室にこもってしまったのだ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> おにいちゃんのハナビ

世界一の片貝大花火  

 片貝町は世界一の花火が打ち上げられることで知られる。華は、成人祝いの花火を打ち上げようとしている成人会に入るよう太郎に強く勧めるが、太郎は煮え切らない。そのうちに華の白血病が再発してしまう。
 闘病しながらも兄のために奮闘する健気(けなげ)な妹。妹の頑張りに何とか応えようとする兄。そんな兄妹をおろおろしながら見守るしかない父と母。様々な人たちの想いが込められた花火の目を見張る美しさ。藤井フミヤの主題歌「今、君に言っておこう」も効果的。決してお涙頂戴(ちょうだい)の作品ではないが、ところどころで涙が溢(あふ)れる。
 
谷村美月が迫真の演技

 兄妹を演じる高良健吾と谷村美月が好演。特に谷村はスキンヘッドになる熱の入れよう。タクシー運転手の父を演じる大杉漣は、この役を演じたい一心でそれまで持っていなかった運転免許を苦労の末に取得。指導員から合格を告げられた時は人目も憚(はばか)らず号泣したという。

<荒井幸博のシネマつれづれ> おにいちゃんのハナビ

大杉漣さんが鶴岡に

 その大杉漣さんが10月9日、この作品を上映中の「鶴岡まちなかキネマ」を訪れトークショーを行ってくれます。この作品を鑑賞後、大杉さんの温かい人柄に触れてみては? 聞き手は私、荒井が務めます。

●「おにいちゃんのハナビ」上映 ▽10月9日(土) 午後4時50分〜6時50分
●大杉漣さんトークショー ▽午後7時〜


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荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。