もう怖くない認知症/認知症の薬物療法(2)

2010年5月14日
 前回は認知症患者に対し、神経遮断(しゃだん)薬を使用するのはとても危険であることをお話しました。死亡リスクさえあり、米国では精神症状の治療薬としては承認されていないこともご紹介しました。

効果的な漢方薬も

 認知症患者には大脳辺縁系を心地よく刺激し、感動を呼び起こす非薬物療法を主体とすべきというのが私どもの考えです。ただ、自然の木や草から採った生薬を原料とする漢方薬の中に効果的なものがあることも分かってきました。そのひとつが「抑肝散(よくかんさん)」という薬です。

もう怖くない認知症/認知症の薬物療法(2)

本来は小児向けの薬

 抑肝散はもともとは子どもの夜鳴きや疳(かん)の虫の治療に用いられてきました。この薬にはまた「母子同服」という原則があり、子どもを世話するお母さんも一緒に飲めば母子ともに精神の高ぶりが抑えられるとされてきました。
 
笑顔が戻ったケースも

 この薬が認知症患者にも効果的だとして注目され、NHKの番組で紹介されるに及んで広く知られるようになりました。2週間から1カ月間の服用で効果があらわれるとされ、実際に認知症の患者さんに飲んでもらうと少しずつ笑顔が戻ったり、穏やかな表情が多くなったりするケースが報告されています。
 
何より副作用がなく

 何より神経遮断薬を用いた時のような強い副作用がないことが最大の利点といえます。これまで述べてきたような大脳辺縁系への良い刺激と相まって効果的であることが認められているのです。


もう怖くない認知症/認知症の薬物療法(2)
藤井 昌彦(ふじい・まさひこ)
1983年弘前大学医学部卒業。山形県立河北病院などに勤務後、99年に医療法人東北医療福祉会理事長。日本老年医学会、日本認知症ケア学会に所属。東北大学医学部臨床教授も務める。