医学のうんちく/新規コンドームの承認
潤滑剤と一緒に使用
承認された製品の名称は「One Male Condom」。天然ラテックス製で、肛門性交時だけでなく、膣性交時の性感染症および妊娠のリスクを減らす目的でも使用できます。ただ肛門性交時には、コンドーム対応の潤滑剤と一緒に使用する必要があります。
同製品の有効性と安全性に関しては、男性と性交する男性252人、女性と性交する男性252人(いずれも18~54歳)を対象に臨床試験が実施されました。
有害事象は2%以下
その結果、コンドームの脱落、破損の発生率は肛門性交で0.68%、膣性交で1.89%で、全体的な有害事象の発生率は、1.92%でした。
内訳は、コンドームまたは潤滑剤による不快感が0.85%、性感染症または性感染症への感染が0.64%、潤滑剤によるパートナーの不快感が0.21%、パートナーの尿路感染症が0.21%でした。
リスク軽減に期待
性感染症は自己申告によるもので、試験開始時に性感染症の検査も実施していないため、同製品の使用開始前に生じたものも含まれる可能性があります。
肛門性交時の性感染症のリスクは膣性交時より明らかに高く、肛門性交の際に感染症を防ぐ手段としてのコンドームの役割に期待がかかります。

日本では予定なし
日本家族計画協会が全国の20~69歳までの男女約5000人を対象に行った調査「ジャパン・セックス・サーベイ2020年版」によれば、肛門性交の経験は男性13.0%、女性11.6%ですが、同製品が日本で承認される予定は現在のところありません。


笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。