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編集長インタビュー

有限会社・南鐐(山形市)社長 清水 恒吉さん

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清水 恒吉(しみず・つねよし)1938年(昭和13年)上山市の老舗和菓子店・福屋菓子店(現・モントレーふくや)で男女9人兄弟の6番目に生まれる。山形商業から東京製菓学校に進み、卒業後、実家でパン職人の道へ。64年に古銭を扱う有限会社・南鐐を創業、山形市十日町に店を構える。商売の傍ら、長年の研究成果をまとめた著書を出版しようと69歳で放送大学に入学、4年後に卒業した。県貨幣研究会会長、日本貨幣協会参事なども務める。85歳。

古銭の魅力は背景にある歴史
 真贋を見極める眼力には自信

――この商売を始められたきっかけって?

幼少期から古銭に没頭

 「実家の和菓子店がパン製造に手を広げ、親父から『お前は手先が器用だからパンをやれ』と言われて。他の男兄弟はみんな大学に進みましたが、私だけ山商を出てパン職人の道へ」
 「ところが甘いものに目がなくて、あんパンをつくりながら餡子を頬張ったりしていたもんだから胃をやられて(苦笑)。入院先の先生から『これじゃ長生きは無理』と脅かされ、幼少期から没頭していた古銭を生業にしてみようと」
 「当時、骨董屋(こっとうや)が細々と古銭を扱っていましたが、古銭に特化した貨幣商は皆無で、周囲は〝ままこ〟扱い(苦笑)。それでも大沼にテナントで出店させてもらったら意外に売れ行きが良くて、それに自信を得て現在地に店を構えたわけです」

顧客から全幅の信頼

――以来、60年近く。
 「古銭の魅力は、その背景に歴史が感じられることでしょうか。歴史は普通、大事件や偉人を軸に後世に伝えられるものですが、もの言わぬ古銭をつぶさに調べていくと、当時の世相や経済状況が手に取るように分かる気分に浸れる」
 「好きこそものの上手なれではありませんが、長くこの商売を続けていられるのは、古銭に関する知識、真贋(しんがん)を見極める眼力では誰にも負けないからだと思う。お客様から全幅の信頼をいただかないと、この商売は成り立たない」
 「真贋といえば、骨董屋から天正大判12枚を手に入れた県内の素封家(そほうか)がいらっしゃいましたが、お気の毒に、私が目利きしたところすべて偽物でした」
 「店頭に並べているのは、全国でうちだけしかないものや、うちと日本銀行だけにしかないものも。お宝ですか?1500万円を超える古銭もあります」

さながら学究の徒

――古銭に関しては本当に〝学究の徒〟でいらっしゃるんですね。
 「論文をまとめようと思い立ち、そのためには博士号が必要だと考えて放送大学に入学、卒業して大学院に進みましたが、著書を出すのにそんな資格は不要だと知らされ…(苦笑)。だから最終的な学歴は放送大・大学院中退です」

あと10年は現役で

――後継者問題とかはどうなんですか?
 「店は私と妻と娘の3人で切り盛りしていますが、古銭の鑑定ができるのは私だけ。店を続けるとすれば切手と金券を中心とした商売にならざるを得ないかな」
 「ただ人生100年時代。あと10年は現役で頑張るつもりです」

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