山形コミュニティ新聞WEB版

編集長インタビュー

山形県酪農業協同組合 代表理事組合長 山口 長一さん

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山口 長一(やまぐち・ちょういち)1955年(昭和30年)南陽市生まれ。赤湯園芸高(現在の南陽高)卒業後、同市坂井で酪農と米作を営む実家で就農。その後、酪農を専業に乳牛の飼養頭数を75年までに50頭、89年までに100頭、2002年までに300頭に増やし、2002年に会社組織化した山口ファームは県内で2番目の規模を誇る。10年から南陽市酪農組合組合長、18年から県酪農業協同組合代表理事組合長。東北生乳販売農業協同組合連合会理事、全国酪農業協同組合連合会理事なども務める。68歳。

酪農、未曽有の危機にあっても
  前を見てやるべきことはやる

――県酪農協ってどんな組織なんですか?

県最大の酪農団体

 「1993年、置賜地方を中心とする酪農専門の4団体が合併して発足した組織です。加盟している組合員は現在82人で、北は山形市や寒河江市、中山町にも。以前は山形市吉原に本部を構えていましたが、効率化などを考慮して3年前にここ(南陽市宮内)に移転してきました」
 「県全体にいる酪農家のうち、置賜は大型化した酪農専業が多く、大半がうちに加盟。置賜以外の酪農家は果樹や稲作との兼業が多く、比較的小規模、全農加盟という色分けですね。規模ではうちが県内最大です」
――全国的に酪農は窮地に立たされていると。
 「順を追ってお話すると、ひところバター不足が社会問題になったでしょ。そうした事態を回避するため、国(農林水産省)は2020年に牛乳の生産量を増やすよう全国の酪農家に要請したわけ。ところが、このタイミングで状況がガラリと変わってしまった」
――新型コロナウイルスの感染拡大ですね。

コロナ禍とエサ代高騰

 「コロナ禍で休校が相次ぎ、学校給食用の牛乳がストップするわ、訪日外国人客が激減して加工用や業務用の消費が激減するわで、一転して〝牛乳余り〟の現象が生じてしまったんですね」
 「追い打ちをかけたのがロシアによるウクライナ侵攻。ウクライナは世界有数の穀倉地帯。あれで牛の餌になるトウモロコシなど穀物飼料の国際価格が急騰してしまった。穀物飼料はほぼ全量が輸入だから、円安も相まってエサ代は6割強も値上がりし、酪農家の経営を直撃しています」
――例えがなんですけど、まさに〝泣きっ面にハチ〟ですね。

自助努力にも限界

 「自助努力にも限界がある。今のままでは利益を出せず、後継者も出てこない。廃業や離農がどんどん進んでいきます」
 「我々はぜいたくを言っているわけではない。ただ、働いた分の報酬は最低限いただきたいということだけなんだから」
――そういう声を為政者に届ける必要があるんでしょうね。

消費拡大に全力

 「それが団体トップたる私の責務。ただ一方で、我々としてもやるべきことはやらなきゃ。グチばかりこぼしていては前に進めない」
 「具体的には、毎年6月1日の『世界牛乳の日』にちなんで山形駅で牛乳を無償配布してるでしょ。あれを今年は赤湯駅でもやります。業務用に特化していた乳製品の販売も個人向けを拡大していくつもりです」
――頑張って下さい。

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