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レカネマブ

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 アルツハイマー病(AD)の新しい治療薬である「レカネマブ」の製造販売が9月に承認され、年内にも保険診療で使える見通しです。今回は現時点で明らかになっている情報をお伝えします。

ADの進行を遅らせる

 ADは認知症の原因の約7割を占めます。レカネマブはAD患者の脳内に蓄積する異常なタンパク質「アミロイドβ」を除去する薬で、臨床試験では1年半投与した集団で症状の悪化を27%抑制しました。これは症状の進行を約7.5カ月遅らせることに相当します。
 ただ副作用もあり、臨床試験では脳の浮腫(ふしゅ)(むくみ)が12%、小さな脳出血が17%みられました。使用法を誤ると無効なだけでなく、害を及ぼすこともあり得る薬といえるでしょう。

使用上の注意

 また、レカネマブの効果は早期のAD患者に限られ、進行したAD患者やADではない認知症の患者は対象外です。
 これらのことから、実際に使用するには患者さんと医療機関に基準が設けられる予定です。具体的には、脳内にどれだけのアミロイドβが蓄積されているかを画像検査で事前に調べたり、使用後に脳内の微小出血など副作用の定期的な検査を行うことなどです。
 また医療機関には(1)専門医の診断 (2)各種研修会の受講 (3)副作用に対する体制――などが求められることになりそうです。

注目の薬価は?

 レカネマブは特効薬ではありませんが、症状の進行を抑えることができれば患者さんはもちろん、介護をする人の生活の質(QOL)も改善します。
 注目される薬価は12月下旬までに決定する見通しですが、日本に先駆けて6月に承認された米国では1人当たり年間2万5000ドル、現在のレートで日本円に換算すれば約370万円に設定されています。

TFメディカル 嶋北 内科・脳神経外科クリニック 医師

佐藤 篤(さとう あつし)

2002年山形大学医学部卒業。山大医学部附属病院、山形済生病院、済生館病院などを経て現職。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医。医学博士。

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