医学のうんちく/精子の話

2021年4月23日
 ヒトの精子の寿命は約5日です。この期間内に卵子に巡り合わなければ受精することができません。

話題作「精子競争」

 英マンチェスター大学の生物学博士、ロビン・ベーカー氏が1995年に著した「精子競争」によれば、精子はその役割により、カミカゼ集団とエリート集団に分けられます。
 カミカゼ集団の役割は受精ではなく、女性の膣内に他の男性の精子が存在していれば、その精子を攻撃することにあります。この集団は子宮頸管内に留まって群れを作り、他の精子の進入を防ぐブロッカー精子と、他の精子を毒殺するキラー精子で構成されます。

医学のうんちく/精子の話

カミカゼとエリート

 エリート集団は受精のためのひと握りの精子でエッグ・ゲッター(卵獲得)精子と呼ばれます。よく動き回り頭部が大きいのが特徴です。
 約100万匹のエッグ・ゲッター精子は約2億匹のカミカゼ集団に囲まれながら卵子を求めて行動します。

互いに協力し合い

 ただ、精子が受精を達成するには体長の約3000倍もの距離を泳ぐ必要があります。東北大学の研究チームは、運動している精子と精子の間に働く流体相互作用について、力学法則に基づくシミュレーションにより解析しました。
 その結果、精子が泳ぐことで作られる液体の流れが他の精子の運動を後押しする形となり、精子は単独より複数で遊泳する方が速度を最大16%増加させることがわかりました。

 こうした精子の協調遊泳が長距離を速く確実に泳ぎ切り、受精することを助けているようです。

目的は卵子到達

 多数の精子がお互いに助け合いながら、卵子を目指しているわけです。
 女性の側から見れば、妊娠する過程で数億匹の精子を自らの膣内で戦わせているということになります。


医学のうんちく/精子の話
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院院長
笹川 五十次
(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。