<荒井幸博のシネマつれづれ> おかあさんの木

2015年5月22日
鈴木京香が好演

 今年は戦後70年。幾度も小学校の国語の教科書に採用され、戦争の悲惨さを訴える大川悦生の同名文学作品を映画化したのが本作。

<荒井幸博のシネマつれづれ> おかあさんの木

 大正初期の長野県の山村。若く美しいミツは想いを寄せる謙次郎と結ばれ、次々と7人の男の子を産む。貧しいながらも笑い声が絶えない日々。
 だが謙次郎が心臓マヒで急死。ミツは悲しみで茫然自失になるが、息子たちに支えられて徐々に立ち直っていく。

 それから数年後――。たくましく成長した息子たちを今度は「戦争」がミツから奪っていく。 
 一郎、二郎、四郎、そして三郎と複雑な思いで息子たちの出征を見送るミツ。息子を戦地へ送り出すたびに桐の木を1本ずつ庭に植え、彼らの帰還を待ち続けるのだった。
 一郎の時は桐の苗に水をかけながら「どうか元気でお国のために頑張っておくれや。卑怯なマネはしねで村のためにも手柄立ててくれや」と語りかけ、“いざ行け つわもの 日本男児!”と「出征兵士を送る歌」を口ずさむ邪気のなさ。
 だが一郎、四郎の戦死の報が届き、五郎にまで召集令状がくると、もう笑顔で送れるミツではなかった。駅のホームで汽車に乗ろうとする五郎の足にしがみつくのだったが、それは国家の側にしてみれば反逆行為だった。

 当時の日本の典型的なおかあさん・ミツを演じる鈴木京香は、今月中旬に全国5カ所の小学校で原作の読み聞かせを行って話題を呼んだ。この読み聞かせは「70年前、戦場に旅立つ子どもたちを断腸の想いで見送り、彼らの帰りを待ち続けた母親がいたことを今の子どもたちに伝えたい」と願う鈴木自身の発案で行われたという。 
 また15日には東海大山形高で上映会と鈴木、磯村一路監督のティーチインも行われた。

 「2度と子どもたちを戦場に送ることがあってはならない」――田園風景に並び立つ7本の桐の老木がそう訴えていた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> おかあさんの木
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。