<荒井幸博のシネマつれづれ> デンデラ

2011年7月8日
姥捨山伝説がテーマ
 庄内映画村を中心に撮影された天願大介(てんがんだいすけ)監督「デンデラ」が6月25日から全国一斉公開されている。
<荒井幸博のシネマつれづれ> デンデラ

「楢山節考」後日譚?

 「デンデラ」のテーマになっている姥捨山伝説でまず思い浮かぶのは28年前に映画化され、カンヌ国際映画祭パルムドール賞に輝いた今村昌平監督の「楢山節考(ならやまぶしこう)」。実は天願監督は今村監督の長男で、「デンデラ」は「楢山節考」の後日譚のように観ることも出来る。

主演は浅丘ルリ子

 70歳の主人公カユを演じるのは浅丘ルリ子。今村監督とは日活黄金期をともに支えた同志だが、意外にも今村作品への出演はゼロ。今村監督のヒロイン像は左幸子、春川ますみ、吉村実子のようにたくましく、どこか土臭い女優たちで、エレガントな美人女優の浅丘は真逆の存在だった。
 その浅丘の起用に息子の天願監督がこだわったのが面白い。即決で知られる浅丘もさすがにこの汚れ役への出演は悩みに悩んだらしい。最後は70歳の今しかできないと思って引き受けたと聞いており、美人女優として56年間、第一線で活躍してきた浅丘の体を張った挑戦といえる。
 
汚れ役を熱演

 やるとなったら腹を決め、雪深い極寒の庄内映画村での1カ月以上に及ぶ撮影にひたむきに取り組んだ。意志が強く、タフな精神力と体力を持つカユを浅丘は見事に演じ、天願監督の期待に応えた。
 
かつては「蕨野行」も

 姥捨山伝説といえば既に山形ゆかりの作品も。村田喜代子の同名小説を映画化した恩地日出夫監督の「蕨野行(わらびのこう)」(2003年)で、飯豊町と川西町を中心に撮影された。
 県内ではここ数年、映画やドラマのロケラッシュだが、その先鞭を付けたのがこの「蕨野行」。因みに、飯豊町・川西町ロケは今村監督「にっぽん昆虫記」以来40年ぶりだった。


<荒井幸博のシネマつれづれ> デンデラ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。