セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第四十八回 鉄砲町街路樹
かつて鉄砲町の商店街には多くの柳の街路樹が植えられていた。たおやかに葉を揺らしながら行きかう人の群れを見送る柳たちは、さながら街のチアガールのようであった。
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この街に三日町方面から電線地中化工事が延びてきた平成14年。この工事は七日町、本町の商店街がアーケードを撤去した後、電線は街の美観を損ねるという理由で始まった。
工事開始当初は景気が悪くなかったせいか予算も豊富であったのだが、その後の景気後退とともに工事のペースも落ち、開始から10余年を経てこの街に及んだのだった。
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良く育った柳の街路樹のおかげで別段、電線が邪魔だなどと感じることもなかったのだが、この街だけ飛ばすわけにいかなかったのか、それまで街の風景づくりに役立ってきた柳たちは全て切り倒して工事が行われることになった。電線のないスカッとした景観のために柳たちは伐られて姿を消していった。
果たして街の景観は以前より良くなったのだろうか? (F)