山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

尿失禁(上)

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 尿失禁とは、自分の意思に関係なく尿が漏れてしまう病気のことです。

女性に多い腹圧性尿失禁

 尿トラブルは男女共通の悩みですが、尿失禁に悩む大半は女性です。
 尿失禁にはいくつかのタイプがありますが、最も多いのは咳やくしゃみ、運動などでおなかに圧力がかかった時に思わず漏れてしまう「腹圧性尿失禁」です。これは尿道の抵抗が弱まり、腹圧がかかると膀胱が収縮していないのに尿が漏れてしまうという病態です。

原因には2つの場合が

 尿道の抵抗が弱まる原因としては、骨盤内臓器を支える骨盤底筋が緩み腹圧上昇時の尿道の閉鎖がおこらない場合と、膀胱頸部・近位尿道が安静時でも開大している場合が考えられます。後者は閉経後のエストロゲン低下が原因とされていますが、詳細は不明です。

減量と運動で改善

 腹圧性尿失禁の大きな原因は肥満です。肥満気味の方が8%の減量で失禁の回数が明らかに改善したという報告もあります。 
 肥満防止を心がけたうえ、腹圧性尿失禁に有効なのが「骨盤底筋運動」という筋肉トレーニングです。軽症例では30~40%程度の消失率が報告されています。
 様々なインターネットサイトなどにトレーニングの動画が紹介されており、パンフレットを読むだけよりも分かりやすくてお勧めです。

手術も効果的です

 腹圧性尿失禁は薬物療法の効果が限定的とされ、生活習慣の見直しやトレーニングでも改善しない場合は手術という選択もあります。手術療法は尿道スリング手術(TVT手術・TOT手術)が標準治療になっています。
 この手術はポリプロピレン製メッシュテープを尿道の裏を支えるように体内に留置することで、腹圧時におこる尿道のぐらつきに抗い、尿失禁を低減するものです。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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