山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

尿失禁(中)

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 前回はお腹に圧力がかかった時に思わず漏れてしまう「腹圧性尿失禁」のお話でしたが、今回は尿意を催すやいなや漏らしてしまう「切迫性尿失禁」のお話です。

切迫性尿失禁

 切迫性尿失禁の原因は過活動膀胱(ぼうこう)です。正常なら膀胱に尿がある程度たまっても膀胱の収縮は起こらず、尿意を催してはじめて膀胱が収縮して排尿となります。それが、切迫性尿失禁では膀胱に尿がたまりかけた段階で強い尿意が生じ、勝手に膀胱が収縮して尿失禁がおきてしまいます。
 過活動膀胱の原因としては、脳血管障害やパーキンソン病など神経疾患によるケースや、加齢や前立腺肥大症などによるケースが多いのですが、原因が分からないことが あるのも実情です。

治療はまず訓練から

 治療としてはまず、排尿間隔を少しずつ延ばすことで膀胱容量を増加させる「膀胱訓練法」をお勧めします。具体的には、短時間から始めて徐々に15〜60分単位で排尿間隔を延長し、最終的には2〜3時間まで延ばすことを目指します。

抗コリン剤とβ3作動薬

 薬物療法では膀胱の収縮を抑える「抗コリン剤」が用いられてきました。安心して内服できる薬剤ですが、膀胱以外にも作用して口内乾燥や便秘などの副作用が現れることがあります。
 そのため、現在では抗コリン剤に比べ副作用が少ない「β3作動薬」が最初に用いられる傾向にあります。ケースによっては2つの薬剤を併用することもあります。

ボトックス注射も

 それでも十分な効果が得られないという場合は、尿道から内視鏡を挿入して膀胱壁に「ボトックス」を注射して膀胱の緊張を和らげる治療法があり、高い効果が認められるとして昨年4月から保険適応になっています。
 お悩みの方は最寄りの医療機関に相談されることをお勧めします。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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