山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

尿失禁(下)

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 尿失禁にはいくつかのタイプがあり、(上)では「腹圧性尿失禁」、(中)では「切迫性尿失禁」についてご説明してきましたが、最終回は「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」と「機能性尿失禁」のお話です。

溢流性尿失禁

 溢流性尿失禁とは、尿の排出障害のために常に膀胱が充満状態となり、尿が溢れて少しずつ漏れる症状です。前立腺肥大症や尿道狭窄(きょうさく)で尿道の抵抗が上昇したり、直腸がんや子宮がんの術後などに末梢神経の障害が起こったりすることが原因になります。
 放っておくと腎機能障害にもつながりかねず、速やかに専門医の診察を受ける必要があります。

治療では手術も

 治療ですが、前立腺肥大症なら薬物療法や手術を行い、尿道狭窄があればブジーや内尿道切開術を行います。
 末梢神経障害が原因の場合、軽度なら薬物療法で改善することもありますが、改善しない時はカテーテルと呼ばれる管を尿道から入れて尿を出す「自己導尿」や、膀胱にバルーンカテーテルを留置して清潔を保ちます。

機能性尿失禁

 機能性尿失禁は、排尿機能は正常ですが、運動機能の低下や認知症が原因でトイレ以外の場所で尿を漏らしてしまう状態のことです。
 分かりやすい例としては、ぎっくり腰など腰痛のためにトイレに行くのが間に合わずに漏れてしまったり、認知症でトイレの場所がわからず漏らしてしまったりするケースなどが該当します。

環境整備と気配り

 治療には環境整備が重要で、身体運動機能の低下が原因ならベッドサイドにポータブルトイレを設置するとか、尿瓶を準備するなどで失禁を避けることができます。
 認知症が原因ならベッドに離床センサーなどを設置し、トイレに向かおうとした時に介護者がトイレまで誘導してあげるといいでしょう。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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