山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

膀胱がん(上)

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 かつて俳優の松田優作さんを死に追いやり、最近では司会者の小倉智昭さんやサンドウィッチマンの伊達みきおさんらが罹患を告白した「膀胱がん」は、膀胱(ぼうこう)に発生する悪性腫瘍です。

喫煙が最大の危険因子

 膀胱がんの原因の約50%は喫煙というのが定説です。喫煙者の罹患リスクは非喫煙者に比べ2.58倍高く、現在も喫煙している場合は3.47倍とされます。
 ただ以前に喫煙していて現在は禁煙している場合のリスクは2.04倍まで下がり、10年以上の禁煙は2倍以下になることが知られています。

発がん物質の曝露も

 喫煙以外に、原因の5~10%は染料や特殊な化学薬品にさらされることとされ、芳香族アミンや多環芳香族炭化水素といった物質を扱う仕事の従事者は1.7倍のリスクがあるとされます。
 昨年5月、福井市の化学工場の従業員6人が膀胱がんを発症したのは発がん物質「オルトトルイジン」にさらされていたことが原因とし、福井地裁が工場側に損害賠償の支払いを命じたのは記憶に新しいところです。

血尿は要注意

 早期の膀胱がんは大半が無症状ですが、排尿時の痛みがないのに血尿が出るのが一番多い症状です。希に、逆に血尿は出ないのに排尿時の痛みや、頻尿や尿失禁の症状が出ることもあります。
 進行すると出血量も増え、膀胱内に出血した血液が固まって膀胱の出口が塞がってしまいます。そのために膀胱にたまった尿が排出されなくなって下腹部が張る「膀胱タンポナーデ」と呼ばれる症状が現れることもあります。

泌尿器科で受診を

 早期の膀胱がんの血尿はすぐに止まってしまうことが多く、そのまま放置して早期発見を逃してしまうこともあります。
 血尿が出たら様子を見ず、必ず泌尿器科を受診するようにしましょう。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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