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内科あれこれ

入浴時の熱中症

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 朝晩の冷え込みが厳しさを増してきたなか、注意が必要なのは高齢者の入浴中の事故です。

交通事故死者数の6倍!

 厚生労働省の発表によると、風呂場での推定死亡者数は年間約1万9000人。2020年の交通事故の死亡者数が2839人ですので、およそ6倍にのぼります。大半が65歳以上の高齢者で、毎年12~4月に多発する傾向があります。

ヒートショック

 入浴中の事故として真っ先に頭に浮かぶのが「ヒートショック」でしょう。ヒートショックとは急激な温度変化により体がダメージを受ける症状で、寒い脱衣所から急に熱い湯に入った時に血圧が変動して心筋梗塞を起こすことがあるので、入浴事故の主な原因とされてきました。

実は怖い「熱中症」

 それが19年、入浴中に体調を崩した高齢者のうちヒートショックが原因だった人は7%に過ぎず、80%以上が「熱中症」だったという調査結果を千葉科学大の黒木尚長教授が発表、世間を驚かせました。

突然死の事態も

 熱中症といえば真夏のイメージですが、体温37度の人が入浴した場合、湯温が42度なら26分で体温は40度に達します。
 体温が40度を超えると熱中症の症状が出始めて意識障害が起き、42.5度に達すると心室細動を起こして突然死する危険性が高まります。
 高齢者は暑さを感じにくく、また長風呂の傾向にあるため、知らない間に熱中症になってしまうというのです。

高齢者は要注意

 ですので高齢者の方は、湯温41度以下、つかる時間は10分までを目安に。ご家族の理解と協力も不可欠です。 

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

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