山形コミュニティ新聞WEB版

内科あれこれ

降圧治療を巡り

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 今回は、高血圧治療に関わる医師の〝悩み〟についてのお話におつき合いください。

140超えたら高血圧

 日本高血圧学会のガイドラインによれば、「正常血圧」とは、上が120未満かつ下が80未満で、上が140以上か下が90以上になると「高血圧」と診断されます。高血圧になると、生活習慣の改善などで数値が改善しなければ降圧剤治療が選択肢になります。
 テレビCMなどで「血圧が130を超えたら…」などと盛んに放送されているのは、こうした事情によるものです。

治療を始めても

 悩ましいのは降圧剤治療が始まってからです。治療を受けている患者さんのうち、正常血圧までコントロールできている患者さんは27%と約4分の1にすぎません。
 降圧剤の効果には定評があり、にもかかわらずコントロール不良が生じている原因は、医師50%・患者30%・環境20%との見方があるのです。

増量は強制できず

 確かに思い当たる節があります。例えば上が160の患者さんに降圧剤治療を施し、135くらいまで下がったとしましょう。こちらとしては「あと一息」と考えて薬の増量を提案します。
 ところが患者さんはすでに別の薬剤を服用されているケースが多く、副作用を気にされて増量には躊躇される方が少なくないのです。「正常血圧まで近づいたし、これ以上は…」と言われれば、それ以上は踏み込めないのが実情です。

学会でも議論に

 この問題に関しては学会内にも「多少の副作用があっても血圧コントロールを徹底するべき」との主張もあります。
 同じようなことはコレステロールや尿酸の治療などにも当てはまり、悩みの種はつきません。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

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