山形コミュニティ新聞WEB版

内科あれこれ

昨今がん事情(上)

Share!

 国立がん研究センターの最新統計から、昨今のがん事情を2回にわけて分析してみましょう。今回は男性編です。

がんの統計2021

 同センターによれば、19年時点のがん患者数は約99万9000人(男性56万6000人、女性43万2000人)で、1位が大腸、2位が肺、3位が胃、4位が乳房、5位が前立腺の順。男性では1位から前立腺、大腸、胃、肺、肝臓の順です。
 男性で亡くなった人は1位から肺、大腸、胃、すい臓、肝臓の順になっています。

治療法が確立したがん

 患者数1位の前立腺がんが死亡順位で圏外なのは、経尿道的手術や重粒子線治療などが確立されたことに加え、ホルモン療法などの治療が普及してきたからでしょう。 
 また以前は断然1位だった胃がんが3位だったのは、内視鏡治療が可能になったことや、主な原因がピロリ菌にあることが分かり、同菌の除去が進んでいることが大きいと見られます。

増え続けるがんも

 一方で肺がんは患者数、死亡数ともに増加しています。40歳でやっとタバコとの縁が切れた私から見れば、昨今は禁煙の動きが鈍化しているように感じられ、そのことが関係していると思えるのですが…。
 大腸がんも増加傾向にあり、食生活の欧米化、特に保存肉の影響が知られています。当面は消化器の中で要注意な臓器になり続けるでしょう。
 肝臓がんはご存知のように、ストレス社会の中でアルコールの過剰摂取が原因とみられます。

死亡者数に男女差

 ここで注意しておきたいのは、がんによる死亡者数には男女で大きな開きがあることです。そうした視点も踏まえ、次回は女性のがんについて取り上げます。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

記事閲覧ランキング

  • 24時間
  • 週間