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内科あれこれ

便秘

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 「便秘」は身近な疾患ですが、実のところ、こうすれば必ず改善するという治療法はありません。

自覚症状があれば

 慢性便秘の国際的な診断基準というものがあるにはあるものの、アンケートや問診ではなかなか判断しにくく、使い勝手もよくない印象です。
 この診断基準では有病率は10%強とされますが、自覚症状のある方はもっと多いように思われます。結局のところ、本人が便秘だと思えばそうなのかもしれません。

生活習慣の改善から

 治療としてはまず生活習慣の見直しが求められます。運動では特に排便回数を増やすのに有酸素運動が効果的です。
 食事では食物繊維やオリゴ糖が腸内細菌の栄養となり、短鎖(たんさ)脂肪酸を作るなどして腸内環境を改善してくれます。乳酸菌や発酵食品も効果があることが知られています。
 前者は「プレバイオティクス」、後者は「プロバイオティクス」と呼ばれ、両者を一緒に摂取する食品「シンバイオティクス」も推奨されています。

薬物治療に浸透圧性下剤

 薬物療法ではかつてセンナなど刺激性下剤が使われていましたが、腹痛を伴うことが多いほか、多用すると耐性ができてしまうのが難点です。
 最近では浸透圧性下剤のひとつ、酸化マグネシウムが主流です。便中の水分を増やして軟らかくすることで排便を促してくれます。医院で便秘の治療を受ける場合は浸透圧性下剤が第一選択になるでしょう。

新薬も登場

 浸透圧性下剤でも症状改善が難しい方には、新しいタイプの下剤が3種類ほど登場しています。これらの薬はいずれも大腸の粘膜に作用したり、大腸に流入する胆汁酸の量を増やしたりして便を柔らかくするもので、高齢者にも安全で永く使えます。米国ではこの種の下剤が主流になっているとのことです。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

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