山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

薬で排尿障害?

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 普段からなじみのあるお薬でも、前立腺肥大症などでもともと尿が出にくい人が飲んでしまうと排尿がさらに困難になることがあります。今回はそんな「薬剤性排尿障害」のお話です。

感冒薬にも原因成分が

 市販のお薬の代表格、総合感冒薬には鼻水や鼻づまりを改善する「抗ヒスタミン剤」という成分が含まれており、膀胱の収縮を低下させる作用があります。また咳止め薬に含まれる「エフェドリン」という成分は尿道抵抗を高め、排尿障害が起きることがあります。
 感冒薬や咳止め薬には、排尿反射を抑制して排尿障害の原因になる「コデイン」を含むものがあります。同じ理由で癌性疼痛などで使用されるモルヒネなどのオピオイド鎮痛薬も排尿障害の原因になります。

花粉症薬にも要注意

 これからの季節、花粉症対策の薬にも抗ヒスタミン剤は使われており、特に第1世代といわれる薬には注意が必要です。
 過活動膀胱薬や胃腸薬、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬などに幅広く含まれる「抗コリン薬」は膀胱排尿筋の収縮力が低下し排尿障害の原因になります。 
 また、血圧が低い方や立ち眩みがひどい方の薬「α受容体刺激薬」は尿道の抵抗が高くなり、排尿に支障が出ることがあります。

漢方薬でも

 これら西洋薬だけでなく、漢方薬にも排尿障害をきたすものがあります。風邪や肩こりによく処方される葛根湯に入っている「麻黄」は、交感神経のα1受容体が刺激される結果、尿道の抵抗が上昇し排尿障害につながりやすくなります。

症状あれば相談を

 何らかの薬を飲み始めた時に尿の出づさを感じたら、それが薬のせいなのかどうか、かかりつけの薬剤師さんや主治医に相談されることをお勧めします。症状が深刻なら対応を急ぎましょう。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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