山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

精巣腫瘍(上)

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 精巣腫瘍(しゅよう)は男性の精巣(睾丸(こうがん))に発生する悪性腫瘍です。人口10万人当たり1~2人と稀な疾患ですが、爆笑問題の田中裕二さんやネプチューンの堀内健さんらが罹患したことで知られます。

発生ピークは20~30歳代

 発生のピークは20~30歳代で、この年代における男性の悪性腫瘍の中で最も発生頻度が高い疾患です。しかも比較的早期から転移し、悪性度が高いのも特徴です。
 症状は早期で最も多いのが痛みを伴わない精巣の腫大(しゅだい)で、「最近、なんだか片方の睾丸が大きくなってきたような…」などと感じた場合は要注意です。

乳房が大きくなることも

 精巣の腫大以外では、陰嚢部の痛みと、転移由来の症状がそれぞれ約10%あります。前者の場合は精巣捻転(ねんてん)や精巣上体炎との識別が重要になります。
 後者の場合、具体的には肺への転移なら血痰(けったん)、呼吸困難、胸部レントゲンの異常影などがあり、リンパ節への転移なら腹痛、腰背部痛などがあります。
 また約1%と非常に稀ですが、hCGというホルモンを産生する腫瘍の場合は乳房が大きくなることがあります(女性化乳房)。

検査方法は?

 精巣腫瘍の有無を調べる検査には陰嚢の触診、精巣の超音波検査、全身CT、血液検査(腫瘍マーカー)などがあります。
 腫瘍マーカーにはα胎児蛋白(たんぱく)(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、乳酸脱水素酵素(LDH)の3つがあり、診断や治療効果判定、経過観察中の再発の有無の判断などに不可欠なものです。

疑われれば精巣摘出

 これらの検査で精巣腫瘍が疑われたら、診断と治療を目的として精巣を摘出し、病理検査で診断を確定します。
 その後の流れは次回にお話ししましょう。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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