山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

精巣腫瘍(下)

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 精巣腫瘍の治療は、まずは「高位精巣摘除術」で精巣・精巣上体・精索を一塊として摘除し、組織診断を行ってその後の治療方針を決定します。

転移なければ経過観察も

 精巣腫瘍は肺やリンパ節などに転移しやすいがんですが、明らかな転移がない場合は無治療で経過観察していても再発しないケースが大半です。
 組織診断の結果次第で、経過観察だけにするか、再発予防を期して化学療法や放射線治療を行うかを決めます。

転移あれば化学療法

 肺などに転移している場合は、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3製剤による化学療法(BEP療法)を行います。
 精巣腫瘍はがんの中でも化学療法がよく効くのが特徴で、転移がある場合でも約80%は治癒に導くことができます。

重要な経過観察

 ただ、精巣腫瘍は治療後2年以内の再発が圧倒的に多く、この期間中はCT(コンピューター断層撮影)検査や腫瘍マーカーの採血を何回も行い、厳重に経過観察することが必要です。
 2年が過ぎても「晩期再発」といって術後長期間経過してから傍大動脈周囲のリンパ節転移や肺転移などが出現することがあります。経過観察の間隔は延ばしても、外来での経過観察はほぼ生涯にわたって続ける必要があります。

不妊症に備えて

 前回もお話したように、精巣腫瘍の発症のピークは20~30歳代です。このため治療後の不妊症がこの疾患の問題になります。化学療法を行うと、残っている精巣の造精機能が障害を受けるからです。
 ですので、お子さんを持つ希望がある患者さんが化学療法を選択する場合は、治療前に精子の凍結保存を行い、治療終了後に生殖補助技術を使ってパートナーの妊娠出産までをサポートすることになっています。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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