山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

急性陰のう症【中】

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 急に陰のうが痛くなる「急性陰のう症」のうち、今回は「精巣垂捻転(せいそうすいねんてん)」と「精巣上体垂捻転(せいそうじょうたいすいねんてん)」のお話です。

精巣垂・精巣上体垂捻転

 精巣垂、精巣上体垂はいずれも陰のう内にある組織ですが、生殖に関わる機能などはなく、捻転を起こして組織が壊死(えし)しても何ら問題はありません。その点で、前回のテーマであり、迅速かつ適切に診断と治療を行わないと精巣を失ってしまうことになる「精巣捻転」とは異なります。
 ですので、精巣垂捻転も精巣上体垂捻転も基本的に手術は必要ありませんが、厄介なのは精巣捻転と症状が同じため、鑑別が困難なことです。

大切な精巣捻転との識別

 このため、診断にはまず陰のうの観察を行います。陰のう頭側に小さな青みを帯びた変色があり、その部分に痛みがあれば精巣垂捻転か精巣上体垂捻転が疑われます。
 次に超音波検査で陰のう内の観察を行います。精巣の外側に腫大(しゅだい)した精巣垂や精巣上体垂を認め、かつ精巣の血流が確認できれば精巣捻転の可能性はなくなります。

難しいのも実情

 ただ、精巣垂捻転、精巣上体垂捻転の発症のピークは精巣捻転よりやや若い9~11歳で、この時期の男の子の精巣はまだ小さく、精巣の血流がしっかり確認できないことも多いものです。
 このため精巣外側の構造物が腫大した精巣垂なのか、捻転した精索なのか確証をもって診断できないこともあります。

万一を考え手術も

 先ほども触れましたが、確実に精巣垂捻転、精巣上体垂捻転と診断できれば特に治療の必要はありませんが、万が一、精巣捻転だった時のことを考えて手術を行うこともあります。
 手術をしてみて精巣垂捻転や精巣上体垂捻転であることが分かれば、精巣垂や精巣上体垂を取ってしまえば手術は終了となります。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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