急性陰のう症【下】
急に陰のうが痛くなる「急性陰のう症」のうち、今回は「精巣上体炎」と「精巣炎」のお話です。
精巣上体炎とは
精巣上体は精巣でつくられた精子の通り道で、精子はここで運動能力や受精能力を獲得します。精子はその後に精管に送られ、10~14日かけて尿道に至ります。射精した精液が尿道から出てくるのはこのためです。
精巣上体炎は、外部から病原菌が尿道に入り、精管を逆行して精巣上体で生じる感染症です。病原菌としては大腸菌や淋菌(りんきん)、クラミジアなどがあります。
高熱が出ることも
軽症なら陰のう内の軽い違和感だけですが、重症例になると精巣上体や精巣が硬く腫(は)れあがり、陰のう皮膚が炎症で赤くなって浮腫(ふしゅ)(むくみ)が起きることもあります。
また精管に沿って痛みの範囲が広がり鼠径部(そけいぶ)が痛むことがあるほか、炎症が強いと高熱が出ることもあります。
治療は抗生剤の投与
診断は、触診で精巣上体が硬くなり痛みを伴うことで判明します。陰のうの皮膚まで真っ赤に腫れあがっているような場合は、超音波検査を行うと腫大した精巣上体とカラードップラーで炎症による著明な血流増加を認めます。
治療は病原体に対する適切な抗生剤の投与となります。。
精巣炎とは
一方、精巣炎の大半は思春期以降にかかったおたふくかぜの合併症で、発症後3~7日後に痛みを伴って精巣が腫れ、全身の発熱を伴います。ほとんどが片側の精巣に起こりますが、両側に発症することもあります。
希に男性不妊症の原因になることもあります。おたふくかぜの合併症の場合、治療は精巣の冷却と解熱鎮痛剤の内服など対症療法になります。梅毒や淋病が原因の場合はそれぞれに有効な抗生剤の投与を行います。
いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。