今回から３回に分け、急に陰のうが痛くなる「急性陰のう症」について解説していきましょう。【上】は思春期に多い「精巣捻転（ねんてん）症」です。

精巣がねじれる捻転症

　精巣捻転症は精巣鞘膜（しょうまく）が正常より高い位置で精索に付着し、鞘膜の付着部を軸とした鞘膜内捻転が起こりやすくなることが原因です。発症から時間が経ってしまうと精巣に血液が流れなくなり、精巣は壊死（えし）してしまいます。
　ですので、迅速かつ適切に診断と治療を行わないと精巣を失ってしまうことになるため、思春期のお子さんをお持ちの保護者の方には「陰のうが痛い時はすぐに泌尿器科がある病院へ」ということを知っておいて欲しいものです。

周囲の方は要注意です

　ただ思春期の多感なお子さんは「陰のうが痛い」とは言えないことが多く、下腹部や股関節の痛みを訴える場合があるので要注意です。
　また精巣捻転では吐き気を伴うこともあり、周囲が胃腸炎などと間違って救急外来の受診をためらってしまうこともあります。

発症後すぐなら温存可

　「もしや精巣捻転では？」と疑われる時は直ちに病院に行き、精巣捻転と診断されれば即、緊急手術となります。手術は陰のう切開して精巣の捻転を解除し、血流の回復を目指します。その後、精巣が再びねじれないよう陰のう内に縫い付けるというものです。
　発症から６～12時間以内に手術すれば精巣は温存できる可能性がありますが、時間がたってしまうと精巣を摘除するしかなくなってしまいます。

気づいたら病院へ

　とにかく精巣捻転症に対処するにはスピードが勝負。迅速な手術につなげるためには、症状があれば休日だろうが夜中だろうが直ちに病院に駆けこむことが肝要です。
　その際は緊急手術に備え、食事はしないで受診することをお忘れなく。

いしい腎泌尿器科クリニック　院長

石井 達矢（いしい　たつや）

1999年（平成11年）山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。