内科あれこれ
非びらん性胃食道逆流症
食道の代表的な疾患のひとつである「逆流性食道炎」については以前にも紹介しましたが、類似の症状として「非びらん性胃食道逆流症」があります。
逆流性食道炎とは
おさらいをしますと、逆流性食道炎とは胃酸を含む胃内容物が食道に逆流することにより、胸の痛みや胸やけ、つかえ感、声のかすれ(嗄声)、慢性的な咳などの症状が現れる病気です。
原因としては、脂分の多い欧米型の食生活の普及や、胃がん予防のためのピロリ菌の除去で胃酸が多く出るようになることなどが指摘されていますが、放っておくと食道がんになる危険性があります。
びらんは認められず
ここからが本題です。逆流性食道炎の場合、内視鏡(胃カメラ)などで検査すると、潰瘍の一種である“びらん”が認められますが、非びらん性胃食道逆流症の場合は内視鏡検査でも文字通り、びらんなどの異常は認められません。
にもかかわらず、胸やけや咳など逆流性食道炎と同様の症状が現れるのがこの病気の特徴です。
ストレスも一因?
非びらん性胃食道逆流症は比較的若い人に増えており、ストレスによる食道の知覚過敏が原因との見方があります。
逆流性食道炎の治療の基本は胃酸を抑えることを主眼にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を用いますが、非びらん性胃食道逆流症の場合は胃酸を抑えることが必ずしも症状を改善することにはつながりません。
治療法も異なります
胃酸過多だけが原因ではないため、治療としては胃の動きを改善する薬や漢方薬などを用います。症状は似ているものの逆流性食道炎とは別の病気と考えた方がいいでしょう。
きくち内科医院 院長
菊地 義文(きくち よしふみ)
1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。