女性の涙
昔から「男性は女性の涙に弱い」と言われてきましたが、女性の涙に含まれる成分が男性の性的興奮や攻撃性に影響を与えることが分かってきました。
性的魅力につながらず
イスラエル・ワイツマン科学研究所のチームが2011年、女性が悲しい時に流した涙を採取して男性の鼻の下に置いて匂いを嗅がせたところ、その女性に対して性的魅力を感じにくくなることを報告しています。
同様に伊・パルマ大の研究チームが20年、雌マウスの涙には雄の脳に働いて攻撃性を抑制する成分が含まれることを示しています。
攻撃性を抑制
前述のワイツマン科学研究所のチームは23年、男性25人を対象に悲しい映画を観て女性が流した涙と、女性の頬を伝わせた生理食塩水の匂いを嗅がせ、攻撃行動の度合いを調べることのできるオンラインゲームを行わせました。
結果は、両者の匂いの識別はできなかったものの、女性の涙の匂いを嗅いだ男性では攻撃性の度合いが43.7%低下しました。
嗅覚、脳が反応
また人間の嗅覚が無臭である涙に含まれるシグナルを処理できるかどうかを調べたところ、62の嗅覚受容体のうち4つで反応することが確認されました。
さらに女性の涙を嗅いでいる時には、攻撃性と関連する脳領域の活動性が低下していることが機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)の計測で明らかになりました。
ウソ泣きにはご用心
悲しみによって流れる涙は、目に入ったごみを洗い流すために出る涙とは組成が異なります。
ウソ泣きの涙ではこのような効果は認められませんので、ご注意を。
山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。