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荒井幸博のシネマつれづれ

レジェンド&バタフライ

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手を携え天下統一目指す

東映創業70周年記念作品。タイトルの「レジェンド」は織田信長、「バタフライ」は帰蝶と呼ばれた濃姫を指す。

<荒井幸博のシネマつれづれ>レジェンド&バタフライ

 〝尾張の大うつけ〟織田信長に〝美濃のマムシ〟斎藤道三の娘・濃姫が嫁いできた。敵対する隣国同士の政略結婚で、2人は互いの寝首をかこうと一触即発の関係だった。そんな中、4万を超える今川義元の大軍が尾張に侵攻してくる。


 圧倒的な戦力差に絶望しかける信長だったが、濃姫の叱咤激励と戦略によって奇跡的勝利を収める。後世に名高い「桶狭間の戦い」である。


 この日を境に2人は次第に強い絆で結ばれ、やがて誰も成し遂げたことのない天下統一という夢に向かって突き進んで行くのだった──。

 信長は木村拓哉、濃姫は綾瀬はるかが演じる。筆者は木村が25歳の時にTBS時代劇「織田信長天下を取ったバカ」で若き日の信長を演じていたのを知らず、かねて木村の信長を熱望していたので思わず快哉を叫ぶ。


 新婚初夜から大喧嘩となるが、その格闘の凄まじさは圧巻。身体能力の優れた綾瀬ならばこそで、それを受ける木村もアッパレ。信長が濃姫にやり込められる激闘場面は笑いすら誘い、グイグイ惹き込まれる。


 決して強国ではなかった美濃の城主の信長が「魔王」と恐れられるまでの葛藤や苦悩、そして30年に亘る濃姫との相剋と愛の変遷が描かれる。

 メガホンを取ったのは「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督で、城のオープンセット、国宝や重要文化財の空間を使ってのこだわりなど、その演出手腕はさすが。


 濃姫の侍従・伊藤英明、侍女・中谷美紀、道三・北大路欣也、藤吉郎・音尾琢真は適材適所、宮沢氷魚の明智光秀は意外にもハマる。


 家康の斎藤工はエンドロールで初めて気づくほどで、白眉は森蘭丸・市川染五郎。これら俳優陣を息づかせた脚本の古沢良太にも拍手。

 70周年記念を飾るに相応しく、海外でも観てもらいたい作品だ。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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