女性の美と健康/漢方薬とは(3)
前回のおさらいです
前回、漢方医学では人それぞれの心と体の状態を示す〈証〉という概念があり、漢方薬は証に基づいて処方されるというお話をしました。
そして人それぞれの証を判断するため〈四診〉という独自の診断方法を用いることもご説明しましたね。

医師の五感で診断
四診とは〈望診〉〈聞診〉〈問診〉〈切診〉の4つで、「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」といった医師の五感を駆使した診断方法です。順に解説していきましょう。
まず、視覚を用いた診断が望診です。体形や動作、顔色、肌や爪の状態、表情や態度を観察します。舌を詳細に観察して貧血やむくみの有無を調べる〈舌診〉も含まれます。
臭いもチェック
聴覚と臭覚を用いた診断が聞診です。声の大きさ、話し方、呼吸の様子やおなかの音を聞くほか、体臭や口臭をチェックします。
問診は西洋医学でも使われていますが、現病歴や既往歴だけでなく、患者の体質傾向や生活習慣、食べ物の好き嫌いなども聞き出します。
切診は触覚を用います。脈の深さや速さを調べる〈脈診〉や、おなかに触れて抵抗感などを調べる〈腹診〉がこれに当たります。
西洋医学と組み合わせ
お分かりいただけたでしょうか?漢方ではこうした四診を用いて人それぞれの証を見極め、その人にあった漢方薬を処方しています。
現実には西洋医学も取り入れ、聴診器や血圧計で測定したり、様々な画像診断、血液検査、放射線や超音波を使った検査などと組み合わせ、患者さんの全体像を把握したうえで処方されるケースが多いようです。


セントラルクリニック院長
村山 一彦
プロフィール
●(むらやま・かずひこ)1956年山形市生まれ。埼玉医科大学を卒業後、同大、篠田総合病院を経て2004年に産婦人科を中心とするセントラルクリニックを開院。社会福祉法人・慈風会の理事長として特別養護老人ホーム「なごみの里」、認可保育所「はらっぱ保育園」も手がける。