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相続の基礎知識

相続の基礎知識/(36)遺産の共有

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 相続が発生してから遺産分割協議が終了するまでの間、故人の財産はどのように扱われるのでしょうか?

あくまで暫定的な状態

 相続人が複数存在する場合、これらの相続人(共同相続人)は各自の相続分に応じて故人の財産を「共有」していることになります。
 例えば、亡くなった夫名義の不動産があった場合、相続人である妻と子は2分の1ずつの割合で不動産を共有している状態になります。
 この共有の状態はあくまでも暫定的な状態であり、遺産分割協議がまとまれば最終的に妻や子に権利が分割されることになります。

登記などは単独で可能

 この場合、相続人は相続分に応じて故人の財産を使用することができ、また不動産の修理、共有名義の相続登記などについては各相続人が単独で行うことができます。
 ただ売却などの処分行為は相続人全員の同意が必要になります。

当然分割とは

 共有とはならないケースもあります。預貯金や貸付金などの金銭債務は、被相続人が亡くなった時点で法定相続割合によって相続人に分割されているものとみなされます。これを「当然分割」といいます。
 そうすると、遺産分割協議前に相続人は預金の払い戻しを請求できるかのようにも思えます。
 ただ現実には金融機関はトラブルに巻き込まれることを警戒し、残る相続人全員の同意書を求める運用になっています。

払い戻し制度も新設

 こうした事態を避けるため、2018年からは「遺産分割前の払い戻し制度」が設けられ、急ぎの資金需要にも道が開かれています。

 このように相続手続きは難解で、何かと面倒なことが多いのも事実です。お悩みの方は専門家へ相談されることをお勧めします。

遠藤直樹法律事務所 弁護士

遠藤 直樹(えんどう なおき)

1985年(昭和60年)山形市生まれ。2014年に司法修習修了。趣味は釣り。山形県弁護士会所属。

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