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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第八十三回 プロト

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 ミニカーといえば一般的には子どもの玩具と思われがちだが、コレクションにしている大人も少なくない。ただ、かつての山形市にはトミカやホットウィールが玩具店の片隅に置いてあるくらいで、大人向けの専門店はなかった。

《セピア色の風景帖》 第八十三回 プロト

 そんな山形市で約20年前に七日町5で開業したのが「プロト」。ミニカー専門店として抜群の品ぞろえを誇り、普及品から芸術的ともいえる高級品まで、さながら博物館のような展示で見る者の心を奪った。
 高価なアンチモニー製のミニカーなどは「ショーケースから出して見せて欲しい」と店主に言うのもためらわれるほどのまばゆさだった。

 旧式車の多様なデザインはミニチュアの世界で輝きを放っていたが、旧式車そのものを知らない世代は増えていく。そんな世代の興味の対象はスマートフォンの中の世界へ。ミニカーファンもネット通販を利用するようになり、プロトを訪れる客足は次第にまばらに。

《セピア色の風景帖》 第八十三回 プロト

 鈴木店主によると、この5月10日をもって閉店することにしたという。「セール」の文字が哀愁を誘っていた。 (F)

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