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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第136回 大規模林道真室川小国線 朝日―小国区間

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 「廃道」とは大半が長い役目を終えて放棄された道路をさすが、中には当初から廃道になることが運命づけられていた道路もあるようだ。

《セピア色の風景帖》 第136回 大規模林道真室川小国線 朝日―小国区間

 大規模林道真室川小国線の朝日―小国区間の着工は1977年。林業による地域振興が狙いとされたが、林業だけに使うなら全県縦断の必要性はないと思われたし、生活道としては危険である。
 また予定地は膨大な積雪地で、開通しても使えるのは7月から10月ごろまで。通年使用を目指すなら月山新道並みの管理費がかかる。それでも工事は進み、公金が惜しみなく投入された

 着工から10年ほどして予定地にクマタカの棲息が確認され、建設反対運動が盛り上がり始める。
 バブル景気崩壊で県の財政に余裕がなくなってきた98年、当時の高橋和雄知事は朝日―小国区間の工事中止を表明する。
 ただその時点ですでに200億円もの巨費がつぎ込まれていた。

《セピア色の風景帖》 第136回 大規模林道真室川小国線 朝日―小国区間

 血税の無駄遣いとの批判をかわすため、県は苦しい弁解を考えつく。朝日―小国区間は、小枕山トンネルの先に広がる「白い郷土の森」までのアクセス道路だったと言い繕ったのである。
 看板を立て、それらしく装ってはみたものの、駐車場の表示は何とトンネル入り口の前。そしてこの先には進んで欲しくないといわんばかりの表記。実際、トンネルを抜けると遮断機があった。
 案内板には「ここから眺める風景が白い郷土の森」と表記されているが、それまでさんざん山道を走ってきて、ここでまたあえて何の変哲もない山の景色を眺める必然性がどこにあろうか。
 第一、この森が白い時期にはこの道は通行不能なのだ。(F)

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