山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

膀胱がん(下)

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 膀胱がんの最後は治療のお話です。治療法はがんの進行の度合い(ステージ)によって異なります。

ステージ「0~Ⅰ」なら

 前号で、ステージを調べるのと治療を兼ねた「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」についてのくだりがあったのをご記憶でしょうか?
 ステージ0~Ⅰでは、TURBTでがんが取り切れている場合、再発予防のため膀胱内に抗がん剤の膀胱注入療法を行います。この療法は1回だけのこともあれば、複数回継続して行うこともあります。その後は経過観察します。

再発する可能性も

 ステージ0でも「上皮内がん」というタイプの場合は腫瘍が残存していることが多く、結核予防で使われるBCG(ウシ型弱毒結核菌)という薬剤を膀胱内に注入して再発を予防します。
 ステージ0~Ⅰではたびたび再発することがあり、少なくとも術後5年間は定期的に膀胱鏡検査(膀胱ファイバースコピー)でチェックする必要があります。

「Ⅱ」は全摘を選択

 ステージⅡでは、がんを根治させるためには膀胱は温存できず、膀胱全摘術が選択されます。膀胱の機能を補うため、回腸導管や尿管皮膚瘻という尿のストーマを作ったり、代用膀胱という膀胱の代わりの袋を回腸で作成したりします。
 膀胱を全摘した場合、尿を体外に排出するための手術は「尿路変向術」と呼ばれます。
 化学療法や放射線治療を併用して膀胱を温存する試みもありますが、治療成績から判断するとあくまで標準治療は膀胱全摘が基本となります。

「Ⅲ以上」は総合的に

 ステージⅢ以上は手術単独治療での根治は難しく、全身化学療法や免疫チェックポイント阻害薬による治療に加え、手術や放射線治療を組み合わせて最善の治療を選んでいきます。 

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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