山形コミュニティ新聞WEB版

内科あれこれ

ポリファーマシー

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 いくつもの持病を抱える高齢者などが複数の薬を服用することで副作用に見舞われる「ポリファーマシー(多剤併用)」の問題について、私なりの考えや思いを述べたいと思います。

薬の多用で副作用

 そもそも薬には病気が治るまで一定期間服用するものと、体の状態を良い状態に保ち、合併症を予防するために長期間服用するものの2種類があります。
 内科医の立場から申し上げれば、前者には胃潰瘍の薬、後者には高血圧、糖尿病、高脂血症など、いわゆる成人病の薬が該当します。このうち、ポリファーマシーが指摘されるのは特に後者の場合でしょう。

患者さんのために処方

 私見ですが、薬を服用することに対して医師と患者さんの間には避けがたい溝が存在しているように思えます。
 私たち医師は、患者さんの将来の生活が脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)で不便なものにならないよう薬を処方させていただいていますが、患者さんの中には、薬に頼ることが病気に負けたように感じられ、罰を与えられているような気持ちになられる方もおられるようです。

不安がる声も

 良くある患者さんからの質問は「一生服用しなければならないのか?」というものです。また「薬を減らしたいが、医者に遠慮してなかなか言い出せない」という患者さんがいらっしゃることも耳にしてはいます。

合成の誤謬?

 これに対しては「一生良い状態を保つことで病気を防ぎ、結果として良い人生を送っていただくために」と服用を続けることをお勧めしているのですが…。
 結局のところ、この問題は経済学でいうところの「合成の誤謬(ごびゅう)」のような側面があり、悩ましいところではあります。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

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