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泌尿器講座

PSA検査と前立腺肥大

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 宮内庁は10日、「天皇陛下に前立腺肥大が認められた」と発表しました。陛下の異変に最初に警鐘を鳴らしたのはPSA(前立腺特異抗原)検査でした。

天皇の異変を感知

 PSAとは前立腺から精液の中に分泌されるたんぱく分解酵素です。ゼリー状の精液を分解してサラサラにし、精子の運動性を高めて受精を助けるのが本来の役割です。
 前立腺がんにより前立腺の構造が壊れると、精液に分泌されるはずのPSAが血液中に漏れてしまうため、血液検査で一定量を超えていれば前立腺がんが疑われます。
 陛下もPSA検査で異変が認められ、その後の精密検査で前立腺肥大が判明したのです。

前立腺肥大とは

 前立腺肥大と前立腺がんは全く別の病気ですが、前立腺の真ん中には尿道があり、前立腺が肥大すると尿道を圧迫して頻尿や残尿感など尿の通過障害が生じます。
 前立腺肥大が進行すると、排尿直後でも膀胱に排出し切れない残尿が増えます。膀胱に多量の残尿が溜まって排出できない状態が「尿閉」で、尿道にカテーテルを入れる必要も出てきます。

受診が遅れると

 急に尿閉になった場合は大半の人が病院に駆け込みますが、長い時間をかけて尿閉になる場合、頻尿や失禁の状態を我慢して病院に行かない人が少なくありません。
 その場合は膀胱に排出されない尿が多量に詰まっているため、両側の腎臓で作られる尿が体外に排出されず腎不全に進行することがあります。
 腎臓で尿が作られた後の尿の排出障害が原因で起こる腎不全を「腎後性腎不全」といいます。

心当たりの人は

 前立腺がんはもちろん、前立腺肥大が心配な人は年に1回、PSA検査を受けましょう。また頻尿や残尿感など心当たりのある人も、一度お近くの泌尿器科での精密検査をお勧めします。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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