山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

ナットクラッカー症候群

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 腎臓(じんぞう)は身体の左右に2つありますが、大動脈と上腸間膜(じょうちょうかんまく)動脈の間を走る左の腎臓の静脈がクルミ割り器(ナットクラッカー)に挟まれたように圧迫され、血尿や左脇腹の痛みの原因になることがあります。この症状はその名の通り「ナットクラッカー症候群」と呼ばれています。

診断は超音波、CTで

 超音波で観察すると、ナットクラッカー症候群の人の左腎静脈(さじんじょうみゃく)は腹部大動脈―上腸間膜動脈間で細く、それより腎臓側の静脈はうっ血により拡張しています。血流速度を測定すると左腎静脈の狭窄部(きょうさくぶ)と拡張部では血流速度に差があります。
 これらのことは造影CTで観察するとより詳細に分かります。

まずは経過観察

 ナットクラッカー症候群は左腎静脈の狭窄が持続することで、側副血行路という血管の迂回路(うかいろ)が作られることがあり、自然治癒(ちゆ)も望めます。このため、まずは経過観察を勧めます。
 またナットクラッカー症候群は痩せた方に多く、内臓脂肪が増えると左腎静脈の圧迫が緩和されて症状が改善することがあり、体重を増やすことも有効とされています。

重症例では手術も

 その一方で、貧血が進むほどの血尿や鎮痛剤をやめられないほどの強い脇腹痛が続く場合は手術も考えます。
 開腹手術としては左腎静脈を狭窄部から外して別な位置で下大静脈につなぎ直す左腎静脈転位術が行われます。手術よりも体への負担が少ない血管内治療が行われることも多く、左腎静脈に自己拡張型ステントを留置する方法があります。

必ず医療機関の受診を

 肉眼的血尿の原因が必ずナットクラッカー症候群とは限りません。膀胱炎(ぼうこうえん)や尿路結石、尿路悪性腫瘍(しゅよう)など他の疾患を見落とさないように、赤い尿が出たらまずはお近くの泌尿器科でご相談を。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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