山形コミュニティ新聞WEB版

脳の四方山話

熱中症と脳の病気

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 今夏も暑さが猛威を振るい、全国で熱中症で救急搬送される人が増えています。そして熱中症が脳の病気につながってしまうことがあります。

熱中症とは?

 熱中症とは高温多湿な日本独特の環境に長時間さらされることで体温調節機能が破綻し、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで発症します。症状はめまいや頭痛、倦怠(けんたい)感のほか、意識障害やけいれんなど重篤な状態にまで進行することがあり、決して油断してはならない病態です。

 そんな熱中症は脳卒中のリスク因子ともなりえるのです。

脳梗塞・脳出血にも

 その代表がやはり脱水症状で、血管の水分が足りなくなると血液がドロドロになり、血栓(けっせん)ができやすくなります。これが脳の血管を詰まらせ、脳梗塞(のうこうそく)を引き起こすリスクが高まります。

 血圧の大きな変動も危険因子です。熱中症では血圧が低下する一方、体はそれを補おうと交感神経を活性化させ、逆に血圧が急上昇することもあります。こうした血圧の乱高下が脳出血を誘発することは医学的に実証されています。

大切な予防

 予防の基本はやはりこまめな水分・塩分の補給。そしてエアコンや扇風機を使って室内の温度をできるだけ一定に保つことです。また外出時は帽子や日傘を利用し直射日光を避けることや、無理な運動は控えることを心がけましょう。

 一部で流行しているハンディファンは、高温多湿な中で使うと逆に熱い熱を体に循環させてしまい、むしろ危険な時もあります。濡れタオルやミストなどを併用して冷たく涼しい風を体に送ることをお勧めします。

実は恐ろしい熱中症

 熱中症は単なる「夏バテ」ではなく、脳の病気につながる恐ろしい病気です。対策を万全にして、楽しい夏を過ごしましょう。

ミロク脳神経リハビリクリニック 院長

齋藤 佑規(さいとう ゆうき)

1980年(昭和55年)酒田市生まれ。酒田東高から山形大医学部に進み、脳外科医として山大医学部付属病院、山形済生病院などでの勤務を経て2023年9月にミロク脳神経リハビリクリニックを開業。日本脳神経外科学会専門医・日本リハビリテーション医学会専門医。

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