山形コミュニティ新聞WEB版

脳の四方山話

頭部外傷にご用心

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 山形の特産物といえばサクランボ。収穫も本番を迎えていますが、高い所での作業中に転落し、頭部に外傷を負うといったニュースも耳にします。今回はこうした「頭部外傷」のお話です。

軽くても放置せず

 硬い地面に頭をぶつけてしまい、傷が大きかったり、意識がもうろうとするなどの症状があれば医療機関を受診されるでしょうが、たんこぶなどで済んだといったケースでは放置しておく方もいらっしゃるでしょう。

 そんなケースでも注意が必要です。脳の細胞に傷がつく「脳挫傷(のうざしょう)」や、脳の周りの血管が破けてしまう「外傷性くも膜下出血」などの心配があります。これらは受傷時は何でもなくても、後からけいれんなどの症状が出ることがあります。

心配な慢性硬膜下血腫

 そして最も心配なのが「慢性硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)」です。慢性、つまり「ゆっくりと」硬膜という脳を包んでいる膜の下に出血するという疾患です。一般には馴染みがありませんが、実は脳外科の手術症例の中では最も多い疾患のひとつです。

 この疾患は頭をぶつけて1~3カ月してから徐々に歩行障害やもの忘れ、尿失禁(にょうしっきん)などの症状が出現します。いわば「忘れたころにやってくる」病気といえます。

 実際、県内ではサクランボの収穫時期を過ぎた秋から冬にかけて来院され、診断した結果、慢性硬膜下血腫と分かるケースが目立ちます。

早期発見が大切

 慢性硬膜下血腫は早い段階で見つけられれば、身体への影響が比較的少ない局所麻酔による短時間の手術で治癒が見込めます。つまり早期発見が大切です。

 高齢者や喫煙、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方が発症しやすいとされていますが、現在は少しでも頭に血がたまりにくくする内服薬などもあります。

 思い当たりのある方は、症状がなくても医療機関を受診しましょう。

ミロク脳神経リハビリクリニック 院長

齋藤 佑規(さいとう ゆうき)

1980年(昭和55年)酒田市生まれ。酒田東高から山形大医学部に進み、脳外科医として山大医学部付属病院、山形済生病院などでの勤務を経て2023年9月にミロク脳神経リハビリクリニックを開業。日本脳神経外科学会専門医・日本リハビリテーション医学会専門医。

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