山形コミュニティ新聞WEB版

内科あれこれ

腸内細菌

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 人間の腸には100兆個以上の細菌が繁殖しており、人にいい働きをする善玉菌もいれば悪い働きをする悪玉菌もいます。これら腸内細菌の影響は多岐に及びます。

過敏性腸症候群

 悪玉菌がもたらす代表的な病気が「過敏性腸症候群」で、炎症や潰瘍などがないにも関わらず、腹痛を伴って便秘や下痢を繰り返します。
 これは腸内で悪玉菌が増えて乳酸を酢酸やプロピオン酸に変化させることが原因で、ひいては患者さん自身の健康感(自分が健康であると感じること)をも悪化させることが知られています。

脂肪肝とも関係

 「非アルコール性脂肪性肝疾患」「非アルコール性脂肪肝炎」も腸内細菌が関係しているとされます。これらは中等症から重症の脂肪肝と考えてもいいでしょう。
 胃腸で吸収されたすべてのものは門脈と呼ばれる血管を通して肝臓に運ばれますが、腸内細菌が悪化すると腸内の細菌や炎症物質も肝臓に行きやすくなるほか、脂肪細胞から出る物質が肝臓で起こる炎症を増幅させてしまうのです。

野菜を食べましょう

 腸内細菌が悪玉化するのは脂肪の摂取過多が原因のひとつで、繊維質の多い野菜を摂るのが良いとされます。ただ、一度悪玉化した腸内細菌を善玉に変えるのは容易ではありません。
 ビフィズス菌などの善玉菌を投与しても、腸内細菌同士の堅い結びつきに阻まれてそれが腸で定着することはないとされています。

まだまだ研究の余地が

 ビフィズス菌やオリゴ糖の摂取には効果も報告されていますが、千人単位で投与した人とそうでない人を比較してようやく差が出る程度。まだまだ研究の余地が残る分野なのです。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

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