山形コミュニティ新聞WEB版

荒井幸博のシネマつれづれ

市子異動辞令は音楽隊!

Share!

 

左遷先に待っていた世界は

 30年間犯罪撲滅に人生の全てを捧げてきた刑事の成瀬司(阿部寛)はゴリゴリ昭和気質で、〝足を使え〟が口癖。

 家庭を顧みず捜査一筋に生きてきた成瀬は、認知症を患う母(倍賞美津子)と2人暮らし。離婚した元妻と暮らす娘の法子(見上愛)が時々祖母の世話に来てくれるが父親には反抗的。


 職場では、時には部下を怒鳴り、手を上げ、コンプライアンス遵守を掲げる上層部とは事あるごとにぶつかる。独り暮らしの老人を狙ったアポ電強盗の捜査でも、刑事の勘を頼りに違法スレスレの捜査を行う。部下で相棒の坂本(磯村勇斗)はそのやり口に反発を覚えるのだった。


 そんなある日、周囲の反発などお構いなしに捜査に邁進していた成瀬は県警本部長から「パワハラの告発があった」と異動を命ぜられる。

<荒井幸博のシネマつれづれ>異動辞令は音楽隊!

 異動先は存在すら知らなかった広報課警察音楽隊。社会のため、組織のため、家族のためと一心不乱に捜査畑一筋に歩んできた結果がこれかと不貞腐れた成瀬が、音楽隊で馴染めるはずはない。


 指揮者の沢田(酒向芳)は気弱で、個性豊かな団員を統率できないでいた上に成瀬が加わったものだから、音楽隊に不協和音が噴出、組織はガタガタに。演奏会に列席した県知事からは「税金の無駄遣い」と言われ、廃止の危機に陥るのだった。

 交通課の仕事と子育てを両立しているシングルマザーを演じた清野菜名のトランペット、皮肉屋の自動車警ら隊員・高杉真宙のサックス、同隊員・板橋駿谷のチューバ、交通機動隊・渋川清彦のパーカッションなどの演奏はその演技とともに見ごたえ、聴きごたえがあって見事。


 阿部寛のドラムもかなりの努力の跡がうかがえ、「イン・ザ・ムード」の演奏は心躍る。

 認知症で亡き夫や別れた嫁と未だに同居していると思い込む母に声を荒らげる阿部寛に自分を重ね、倍賞美津子の悲しそうな表情に母を重ね、思わず涙するのでした。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


記事閲覧ランキング

  • 24時間
  • 週間