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荒井幸博のシネマつれづれ

ヴィレッジ

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閉ざされた村社会の闇

 「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督のオリジナル脚本を横浜流星の主演で映画化したヒューマンサスペンス。

<荒井幸博のシネマつれづれ>ヴィレッジ

 日本の原風景が拡がる地方の集落、霞門村(かもんむら)。この美しい村に似つかわしくない巨大なゴミ最終処分場が小高い丘にそびえ立っている。


 村で生まれ育った片山優(横浜流星)は、このゴミ処理施設で働いているが、亡き父が犯した事件への負い目と母親(西田尚美)がギャンブルで抱えた多額の借金を背負い、深夜の不法投棄を強いられていた。


 閉ざされた村社会の中で仲間内からはいじめの標的にされ、孤独に耐えながら絶望と諦めの日々を送っていた。


 そんなある日、幼なじみの美咲(黒木華)が東京から戻ってくる。美咲は死人のような表情の優に驚き、本来の明るさを取り戻すよう働きかけるが、その矢先に――。

 藤井監督と横浜はともに不遇だった7年前に出会ったという。以後、夢を語り、互いに切磋琢磨しながら上り詰めてきた2人が6度目のタッグでディスカッションを重ねながら撮影に臨んだ。

横浜はロケハンまで同行するほどで、藤井監督は「俳優が頑張る姿を見ればスタッフも頑張らざるを得ない。彼には周囲を奮い立たせるストイックさがある」と本作にかける横浜の姿勢をたたえている。


 実際、それは古田新太、木野花、中村獅童、杉本哲太、矢島健一らベテランと一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗ら若手の演技にも波及、アンサンブルの妙味となって本作を貫いている。

 プロデュースしたのは2008年に映画配給会社「スターサンズ」を設立以来、「息もできない」「かぞくのくに」「あゝ、荒野」「愛しのアイリーン」「新聞記者」「ヤクザと家族 The Family」などエッジの利いた話題作を次々と送り出してきた河村光庸氏。


 河村氏は22年6月、心不全のため72歳で急逝。本作は河村プロデューサーの遺作となった。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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