<荒井幸博のシネマつれづれ>ドリームプラン

2022年2月25日
「念ずれば通ず」を描く

 プロテニス界で史上最強とうたわれる黒人のビーナス&セリーナのウィリアムズ姉妹。本作は姉妹を世界チャンピオンに育て上げたテニス未経験者の父親リチャードの実話をもとに描いたドラマで、主演・制作はウィル・スミス。

<荒井幸博のシネマつれづれ>ドリームプラン

 テレビで優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見たリチャードは衝撃を受ける。すでに3人の娘がいるリチャードだったが、「これから子どもをつくってテニスプレイヤーにしよう!」と決意するのだった。
 とはいえ、リチャードにテニスの経験はない。有能なコーチを雇って専門的なレッスンを受けさせるのが近道だが、そんなお金もない。
 ないないづくしのなか、独学でテニスの教育法を研究して78ページにものぼる計画表を作成し、常識破りの計画を実行に移そうとする。

 リチャード自身は夜警を、妻は看護師をして、狭い部屋に子ども5人と暮らす貧しい生活。当時、テニスはまだ裕福な白人のスポーツのイメージが強かったが、朝から晩まで2人の姉妹にテニス漬けの生活を強いる様子を見た近所の人が「児童虐待」と警察に通報、逮捕されることも。
 そんなある日、リチャードは有名選手のコーチを務めるポール・コーエンのもとに姉妹を連れていく。突然の訪問にポールは取り合わないが、リチャードは僅かな時間をもらいその場で2人のプレーを見せる。ポールは2人の素質と将来性を感じ、レッスンを無料で引き受けるのだった。

 リチャードとその家族の足跡は、さながらアメリカンドリームの実現を見る思いがする。ビーナスとセリーナのようなことは滅多に起こらないだろうが、この物語の根底にあるのは、最高の自分になりたいという強い思いと、強い精神力があれば逆境を乗り越えられるということだろう。
 今年の第94回アカデミー賞作品賞最有力候補。同じく有力候補の濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」の最大のライバルになりそうだ。


<荒井幸博のシネマつれづれ>ドリームプラン
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。