<荒井幸博のシネマつれづれ> Fukushima50

2020年3月13日
原発内で戦い続けた50人
<荒井幸博のシネマつれづれ> Fukushima50

 東日本大震災から9年。東京電力福島第一原発事故を主題にした門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男  吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」を原作に、未曽有の事故を防ごうと現場に留まり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いた感動作。

 2011年3月11日午後2時46分、大震災発生。巨大地震で起きた大津波に襲われた福島第一原発は全電源を喪失し、放射性物質放出の恐れがあるメルトダウン(炉心溶融)の危機に。1・2号機当直長の伊崎利夫(佐藤浩市)は作業員を指揮し、所長の吉田昌郎(渡辺謙)は東電本店の現場を無視した指示とのやりとりに追われる。
 原子炉内の圧力は刻一刻と上昇、このままではメルトダウンは避けられない。伊崎は放射性物質を含む気体の一部を外部に排出して圧力を下げる緊急措置「ベント」を行うことを決断する。ベント作業は被曝・死の危険を伴うが、伊崎の呼びかけに我も我もと名乗り出る作業員たち。この一刻を争う緊急時に総理が現場視察に訪れるとの連絡が入り、ベントは中断せざるを得なくなる――。

 事故後に現場に残り死闘を繰り広げた作業員50名は世界のメディアから“Fukushima 50”(フクシマフィフティ)と賞賛された。主人公の伊崎は地元の出身で、父子二代で誇りを持って原発で働いてきた。「俺たちは間違っていたのか?」と吉田に問う伊崎の言葉が重く響く。
 その伊崎を演じた佐藤は「あの原発事故にここまで踏み込み、実際に何があったのかを克明に描く作品はなかった。実際の怖さを僕自身が知ったし、観る人にも実感して欲しい」と訴える。
 出演はほかに吉岡秀隆、平田満、緒形直人、萩原聖人、安田成美、佐野史郎、吉岡里帆、斎藤工ら。在日米軍将校を山形ゆかりのダニエル・カールが演じている。

 佐藤が言うように、あの日なにが起き、誰がどう行動したのかを知って欲しい。当時の政権は今とは異なるが、現在の状況は何ら変わっていないと思わずにいられない。


<荒井幸博のシネマつれづれ> Fukushima50
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。